2024.09.01 導入実例

「医療施設の感染制御における改善効果等の解析」-リスク要因の分析から改善策の共有と実施まで-

医療法人弘仁会 南和病院 技師長(取材当時)
中谷 光良 先生

療養型病院の特徴

当院は、入院患者さんの平均が82.4歳という高齢者中心の療養型病院です。全ての入院患者さんが急性期を終えた慢性期の方で、近隣の病院や施設から入院された方が大半です。移動はほとんどの方が車イスか、寝たきりの方だとストレッチャーという状態です。栄養は、経管栄養や胃瘻、カテーテル(IVH)、排泄はおむつあるいは尿道カテーテルが入っているという状態です。要介護度としては3 ~ 5という方が多く入院されています。よくみられる感染症としては、誤嚥性肺炎、尿路感染症、クロストリジウム・ディフィシル感染症などです。高齢で抗菌薬治療を受ける機会が多いため、耐性菌の持ち込みも多いというのが現状です。耐性菌別に、入院から48時間以内の持ち込みと院内発生を比べてみると、図1に示すように、ある程度一定の数の耐性菌が必ず持ち込まれていることがわかります。

図1 耐性菌別の持込と院内発生の比較

感染症に対する対策

感染症への対策としては、入院時48時間以内に喀痰(呼吸器材料)の培養を行っています。クロストリジウム・ディフィシルのような場合であっても、入院時に下痢がある場合や既往歴で特に直近1か月以内であれば感染のリスクを疑ってディフィシル扱いにしています。当院で検査技師が関わっている事項としては、院内感染マニュアルの作成や院内感染指針の作成、ICTの運営などですが、現在は感染管理アドバイザーとして、感染病態制御学の看護師が専任で業務を行っています。

AI医療データマイニング解析とその結果について

当院においては耐性菌の感染率が減少しないということで、AI医療データマイニング疫学解析を行ってEBMを構築した結果、病棟毎に原因に差があることがわかりました。そこで解析の結果を職員間で共有、リスク改善を再考・実施し、耐性菌感染率が減少しました。

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